少し前ですが、11月18日に、神戸市の六甲山森林整備戦略における植生の研究会が行われました。公務としての参加です。ここでの内容は、個人的な感想ということになりますが、大きなテーマとして、「大径木の管理について」があげられると思います。

 六甲山系については「都市山」と言っております。里山は聞いたことがあるけれどという感じではないかと思います。里山が農村の生活と結びついた山、かつては芝草肥料や燃料の薪炭として早い段階で伐採されていました。かつての六甲山もそうだったわけですが、都市に直接面している六甲山系のような山は、早い段階から、日常の管理からは切り離され、ただひたすら大きく育ってきました。

 大きく育って何が悪いのかという意見もあるかと思います。それが独立した生態系ならともかくとして、都市生活に密接に結びついた山では、人間にとって都合の良い形での管理が必要になります。いたずらに擬人化した表現が適切かどうかはわかりませんが、高齢化社会、後継者不足は、山においても同様です。よく生物多様性や貴重な植物が自然度の高い指標のように思われている方も多いと思いますが、樹冠が覆われると、光が届かなくなり、下層植生が貧弱になり、種数は減る傾向があります。

 写真1は、大師道沿い、モミジの美しい渓谷です。5年ほど前に主として下層の常緑樹をいわゆる除伐をしたのですが、斜面の条件によって、伐採木の萌芽更新、シダ類の発生が活発な箇所とそうでない箇所があります。あらためて、伐採時に植生だけではなく、一日あたりの日照なども考慮する必要があるかもしれません。

DSC_1524

 下の写真は、再度DWぞいの斜面地における試験区です。この現場は、大きなクスノキが多数ある箇所ですが、大きすぎて伐採は難しく、枝を落とすことなどで、ギャップをつくっていくことが考えられます。ただ、その後に、表層が貧弱なままの箇所が多くなっています。過去論文によると、30年くらい前でも林冠の高さ・大きさは変わらないことから、原因の候補として、イノシシなどの獣害により表層が荒らされている可能性も考えられます。ということで、イノシシ除けの柵、表層の土の流れを防止する簡易土留めの設置などを組み合わせて、その後の状況を観察していきます。この2箇所は市有林です。  

DSC_1525

 次は、六甲山上記念碑台の北側のアセビ純林の整備後です。六甲山上区域では80年以上経過しているアセビの純林があります。高さは数メートルくらいですが、非常に密生しており、真っ暗な空間ができあがっています。写真は隣接する未整備区域(第三者所有地)です。伐採を行うことで、明るい多様性のある森林への変化を目的としたものです。実際にはこれも六甲山上区域に特色的なミヤコザサに表層が覆われています。これ自体は表層の土砂流亡には効果があるかもしれません、まあ、これなりに綺麗です。ただ経過観察は必要と考えています。

 次の事例は、唐櫃での2年ほど前にナラ枯れに弱い大径で林齢の高いコナラの大径木の伐採をし、大きなギャップをつくった箇所です。ギャップ区域には初期植生が繁茂しだしております。施業者側の観点からは、更新を進める、若返りを図ることが目標で、萌芽更新が進めば良好と考えますが、一方で防災の先生からは、伐採することで萌芽はしても光合成量が減少することで根が衰退するのではないか、土壌緊縛力の減退がないかという指摘もあります。この現場では、兵庫県森林技術センターが、根系の状況を調査しています。というで整備事例です。この現場では、コナラの大木伐採搬出を行い、大きなギャップをつくりました。初期植生が多数発生しています。また、この現場では、兵庫県森林技術センターが、地中レーダーによる非破壊の根系調査を継続しています。なお、ここから伐採した材は、同じく森林林業技術センターの仲介で、加工され、ひょうご林業会館と六甲山のビジターセンターで使用されています。

植生の研究会・大径木の管理

投稿ナビゲーション


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です